作者:ナディーン・ステアについて
作者のナディーン・ステアという女性についてわかっていることは少ない。アメリカ合衆国のケンタッキー州に暮らしていたらしいこと。彼女が85歳のときにこの詩を書いたらしいこと。それがすべてです。読者の方のなかには、ドイツの児童文学者、エーリッヒ・ケストナーの「もういちど人生がくりかえされたら」という詩を連想される人もいるかもしれませんが、彼女の書棚にケストナーの詩集があったかどうかはわかりません。
しかし、作家でもないごく平凡な女性によって数十年前に書かれたこの詩は、時代や国をこえ、いまも秘かに読み継がれている不思議な魅力をもった希有な作品であることはたしかです。
一般に知られるようになったきっかけのひとつが、1993年にアメリカで出版され世界的ベストセラーとなった『CHICKEN SOUP for the SOUL』のなかで紹介されたことだったことはまちがいないでしょう。また、元ハーバード大学の心理学教授で、アップルの創設者スティーブ・ジョブズに深く影響をおよぼした『Be Here Now』を著したニューエイジの代表的作家ラム・ダスは、自著の『STHILL HERE』で「いつも持ち歩いている文章」として彼女の詩を引用しています。そういった書物などで彼女の詩に触れ、心を動かされた人たちによって、感動の輪が静かに広がっていったと思われます。
インターネットが普及すると、「経営の神様ピーター・ドラッカーが晩年に書いた」というまことしやかな説が語られたり、あるいは原文にはない数行が加えられたりと、少しずつ姿を変えながらも、名もなき“ナディーンおばあちゃんの詩”は今日も世界のどこかでひとり歩きを続けています。
ナディーン・ステア
こがらしパレード
1976年生まれ。高校時代より漫画の投稿を始める。19歳のときに「第32回ちばてつや賞」入選。大学卒業後中古レコード店に勤務。歌謡曲を口ずさみながら自作のアニメ動画を制作したりしている。現在かみひこうきと共に新たな絵本を構想中。東京都調布市在住。
かみひこうき
1965年生まれ。大学卒業後出版社に勤務、書籍編集の仕事を始める。33歳のとき「ダ・ヴィンチ腰巻年間大賞」受賞。これまでにジャンルを問わず500冊以上の本の出版にたずさわる。現在こがらしパレードと共に新たな絵本を構想中。東京都墨田区在住。