「ママ、こんなに愛してることを憎みます」
あまりにも美しく、スキャンダラスな母親との思い出を描いた、半自伝的小説
“呆然とさせられるすばらしさ”
米「ニューヨーク・タイムズ」誌
“真珠のような光をはなって、何度もうっとりさせてくれる美しい処女作”
仏「レヴェヌマン・デュ・ジュディ」誌
ジュスティーヌ・レヴィの自伝的第1作である本作品『あたしのママ』(原題”Le rendez-vous”)は、「ニューヨーク・タイムズ」「レヴェヌマン・デュ・ジュディ」をはじめ、「ヌーヴェル・オプセルヴァトゥール」「レクスプレス」「ル・ポワン」「マガジン・リテレール」「エル」「ル・フィガロ・マガジン」など主要誌に大きく取りあげられ、絶賛を博した。また、刊行の翌年には、コントルポワン仏文学賞を受賞した作品である。刊行されたとき、まだパリ大学(ソルボンヌ)で哲学を学ぶ二十歳の学生だったジュスティーヌ・レヴィは、その若さと、知的で繊細な感受性、バランスのとれた品のよさから、“新しいフランソワーズ・サガン”とたたえられたりもした。
舞台はパリ、サン=ジェルマン・デ・プレのカフェ。十八歳のわたし、ルイーズが、ひとりですわっている。両親の離婚でなかなか会えなくなったママ、アリスから、久しぶりに電話があって、待ち合わせをしているところだ。
テーブルには、時おり飲み物や軽食が運ばれてくる。ウェイターや同級生や、見知らぬ人も声をかけてくる。でもママはなかなか現れず、ルイーズは心のなかで、ママとの過去というもうひとつの時間に、少しずつ、深く、入っていく――。美貌のモデルだったママは、離婚という愛の破綻で心に傷を負ったまま、スキャンダラスなまでに堕(お)ちていったのだ。ママを気づかい、愛し、追いつづけるルイーズのせつない思いに、何度も心がふるえる。
著者ジュスティーヌ・レヴィの経歴にも注目したい。実は、彼女はフランスでは誰もが知っている新哲学派の哲学者・作家、ベルナール=アンリ・レヴィ(通称BHL)を父にもつ。父親譲りの美貌を持つジュスティーヌは、2001年には、ジャンヌ・モローが主演した映画『デュラス―愛の最終章―』(原題”Cet Amour-la”)にも出演している。2004年には、第2作であり、『あたしのママ』の続編的な意味も持つ”Rien de grave”(「たいしたことじゃない」といった意味)を発表。その内容が彼女の結婚、三角関係からの離婚、中絶と薬物中毒、解毒治療、新しい恋愛といったものだったため、ワイドショー的な興味も手伝って、ヨーロッパのベストセラーリストでは、あの『ダ・ヴィンチ・コード』を抜くという売れゆきになった。その第2作に登場する、彼女の夫を奪った憎きライバルは、現在サルコジ大統領夫人となっている(!!)モデル出身の歌手、カーラ・ブルーニである。
(訳者あとがきより一部改変)